Episode 22.0『単車、横濱、風呂の中。』シンガー和田明の東京冒険記
食欲の秋です。和田明です。
ブログ更新、忘れてました。本当です。
前回の更新から〇〇日も空いてしまいました!みたいな、ありきたりな話題はナシよ。野暮ってもんよ。
せっかく久しぶりに書くのだから、ガクブチらしくどうでもいい前置きから入りたい。
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この季節になると、原付に乗っていた頃を思い出す。
ホンダのジョルノ・クレアだ。ベージュと黒でヴェスパのパクリみたいなデザインだった(失礼)。
とにかく風が気持ち良くて、日常のまどろみを後方に置き去りにしてくれる爽快さがそこにはあった。
僕が原付に乗っている姿を見た友人からは、
「原付がかわいそう」
「原付を担いでお前が走れよ」
などという、愛に溢れたコメントを頂戴したものだった。そいつらには控えめにチョップした。
夏にはヘルメットの内側が蒸れるし、冬は手袋を突き抜ける寒さがあったが、楽しさが優っていたように思う。
〇〇年(忘れた)、夏。
僕は完全に学生で、確か「くりびつキンドー」的な名前のハンバーグ屋でアルバイトをしていた。
そのハンバーグ屋は海沿いの観光地にあって、夏休みともなればヴァケーションしにカムしたフォーリナー達でショップのインサイドがコスモでポリタンなのだ(?)。
そうなると僕は提灯お化けの舌のごとく床まで伸びきった伝票と対峙し、灼熱の厨房であまり話の合わない年下の先輩たちと共に8時間に渡り一定のテンポでハンバーグを鉄板に叩き付け続けるのだ。
大学での授業を終え、今日も合挽きミンチを叩きつけるために、ジョルノにまたがり出発しようとしていた。
曇天。何か起こりそうな雲の厚さである。
当時僕は白と緑と青を混ぜた時にできる色で染められたジーパンと、
花柄のシャツに、茶髪ボブで、ヘルメットから前髪だけなびかせながら街を颯爽と駆け抜ける、
森ガール系男子、別名、色白サーファーライダーというポリバレントっぷりであった。
出発してすぐ、大学前で事故は起きた。
先頭で信号待ちしていた僕とジョルノ。
まず、ガシャ、という、金属とプラスチックが擦れる音がした。
と同時にジョルノが前に5mほどぶっ飛んだ。
僕は「はえ!?」という顔とポーズのままふわりと浮き、座標の上では全く移動することなく、
その場にペタンと尻餅をついた。これが俗にいう「人間ダルマ落とし」である。
「ごめんなさーーーーーーい!!」
シャウトと共にメガネ姿の小太りな男性が駆け寄ってきた。大丈夫ですか、と。
ああ、なるほど、僕は追突されたのだ。
振り返ってみると、人間でいう鼻の下辺りを凹ませたハイエースが鎮座してらっしゃった。
よりにもよって、医療系の設備を扱う営業車のようだった。
集まる学生。
一応警察に連絡。警官が5人も来て、そんなに来なくてもと申し訳なくなりながら。
祖父が保険屋をしていたこともあり、事故処理は首尾よく片付いた。
体に違和感があった訳ではないが、一応病院へ。ジョルノも、バイク屋へ行った。
「事故でしょ?聞いてるよ。」となぜか張り切りだすおじいさん先生。
持って行きなさい、と、湿布を300枚ほど持たされて帰った。
逆に腕がどうにかなりそうであった。でも、ありがとう、先生。
その日の夜、追突してしまった社員を抱える会社の社長がその社員に運転させて実家まで謝罪へ来た。
背が低めでかなり太ったその社長は、開口一番、「大丈夫なんだろ?」と言った。
僕は彼の整った白髪をむしり取りたくなった。あとチョップ。
ジョルノは無事で、それからも色々なところへ一緒に行った。
クリスマスの夜遅くまで課題の絵を描いた帰り、長い坂の中腹でガス欠になって泣きそうになったり、
正月早朝、凍結した坂道でつるつる滑ったり、
信号待ちしていたら突然あられが降って来て、プラスチックのヘルメットがカラカラとパーカッシブに打ち鳴らされたり、
日焼けした肌にジリジリと日光を感じながら、入道雲の白さに感動したりした。
結局6年ほど共に過ごした。
いつかまた乗りたいなあ。
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ほい、作文欲解消。
ここからは近況報告。
・横濱ジャズプロムナード2018出演
和田 明 "KING SIZES"として出演。
結論から言うと最高であった。テレビ神奈川のホール会場は超満員。立ち見が出る盛況っぷりであった。
個人的にお世話になってる方も沢山見に来てくださり、感慨深いものとなった。
たまには、僕を幸せにしてくれた共演者について日頃感じていることを、愛情たっぷり、ちゃんと、書き残しておこうと思う。
クレイジーケンバンドさんの歌詞で「音楽の知識なんて語るもんじゃないぜ」とある。つまりちょっと野暮かもしれないし、あれこれ書くのはかなり恐縮だが、ポジティブな思いなので、それでも、書こうと思う。
gt.井上銘 - 僕が渡米する前、6年以上前に鹿児島で出会った。銘にはNYに行った時や上京したての頃からたくさん助けてもらった。活動を共にしたり、彼のライブを見たりしてきたが、常に自分を更新し続ける努力、そして求められるスキルを獲得していきながらも彼にしかできないプレイをする銘は本当に素晴らしい。どんどんカッコよくなっていく。個人的には彼が黒いレスポールで弾くギターソロが大好きだ。今回彼はそのギターを持ってきてくれた。太い音で、しかし分離が良く、銘独特の音色で奏でられるそれは、彼の表情とも相まって、独自の熱として放たれ、受け手を幸せにする。それは会場のお客さんも、ステージ上の共演者も同じだろう。もちろん、僕も!
pf.堀秀彰 - 堀さんとの出会いは「ちぐさ賞」と言うコンペでだった。僕は応募者で、彼は審査員。僕は優勝し、彼から「今度一緒にやりましょう。」という言葉をいただいた。それから、共演者として沢山の場所へ連れて行ってくださった。僕からの誘いも快く引き受けてくださり、今では節目節目で弾いていただいている。堀さんはどんなに早くフレーズを弾いてもとにかく自然に美しく聞こえる。心地よさにふわふわしていると、ぐわっと盛り上がりが起き、ソロが終わる頃には、自然と客席から拍手が溢れるのだった。
僕が堀さんのピアノで一番好きなのは、ツボを抑えてくれるところだ。例えば僕がジャカジャカとギターをかき鳴らし、銘がフワーと雰囲気を作っている時に、僕の想像を超えるほど効果的で美しい一音を水面に垂れる雫のように投下してくれる。それは僕が音楽活動を始めてからずっと欲していた一滴だったし、それを聞ける喜びは僕の脳みそを溶かし、また演奏を依頼してしまうのだ。
ba.納浩一 - 納さんとの最初の出会いは5年ほど前。熊本のハートムーンというお店のアフターセッションでだった。その頃は上京直前くらいで「出て来たら一緒にやりましょう」と声をかけてくださった。実際こちらに出て来てから、gt.布川俊樹さんに改めてご紹介いただき、共演させていただく機会が増えた。納さんはウッドベースもエレキベースもすごい。納さんがウッドベースで弾くswingはドラムの少し前で鳴る。どこまでもドライブして「swingというグルーヴはこれか」と思う。エレキベースを持った時の納さんは、ひたすら僕がジャストだと感じているタイミングで鳴らしてくれる。今回のライブでドfunkになる瞬間があったのだが、その粒立ちしたグルーヴはずっと僕が欲していたもので、音符の長さやタイミングが点で収束している感覚になるほどだった。僕はこの感覚が欲しくて東京に出て来たし、とうとう出会ってしまったと感じた。
dr.加納樹麻 - 樹麻さんを初めて見たのは南青山body and soulでおこなわれていたTail Windのライブを見に行った時だ。僕はずっと自分の中にある「拍が沈む感覚」(ダウンビートというのだろうか?)を体感できるドラマーを探していた。そして樹麻さんこそがその人ではないかと感じた。その後、品川で共演する機会を頂き、その思いは確信へと変わるのだった。何度かお誘いしたがご多忙で日程がなかなか合わず、今回、念願の再共演となった。
樹麻さんの好きなところは、音符の長さとタイミングが最高に気持ちがいい点だ。一音目から点で合う、なんてことは今までで一度もなかった!しかし、樹麻さんは僕のタイムをキャッチしてくれて、リズムが持つ気持ち良さを最大限に感じさせてくれるのだ。
僕の直後はウィリアムス浩子さんの出番だった。楽屋から僕のステージを見て、「ラスベガスでショー見てるみたい!!」と仰ってくださった!!ありがたいなあ。
一緒に写真も撮ってくださり。。優しい優しい方でした。
そんなこんなで、別枠で続けて来た「ガクブチ。」ですが、今度からこちらで書こうと思います。以前の記事はそのままにしておきます。新しい「ガクブチ。」もよろしくね。
最近一番好きなTom Misch。聞いてみてね。
和田 明
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